先週、こども家庭庁発足記念令和5年度健全育成セミナー
「こどもまんなか社会の実現に向けた児童館への期待」に参加。
こども家庭庁成育局成育環境課 山口正行課長による「こども家庭庁とこども基本法」と、
こども家庭審議会こどもの居場所部会委員の安部芳絵先生(工学院大学)による
「遊びを通じてこどもの意見を聴く」をお聴きしました。
以下、ざっくりと概要。
はじめに、山口課長より、こども政策の基本理念、こども家庭庁の組織体制、こども基本法のポイントを土台にこども家庭庁関連施策のスケジュール、こども家庭庁の創設を待たずに実施されてきた「こどもの居場所づくりに関する調査研究」から、居場所の現状と課題、提言の報告があり、その中でポピュレーションとターゲットアプローチについての説明。
「こどもの居場所指針」は令和5年度内に閣議決定予定とのことです。
安部先生からは、こども基本法の一般原則でもある、
子どもの権利条約
「差別の禁止(第2条)」「最善の利益の優先考慮(第3条)」
「生命・生存・発達の保障(第6条)」「意見表明権(第12条)」
について説明があり、これらは全て同時に成立すること。
そして、こども基本法において「義務」と位置付けされている
「こども施策に対するこども等の意見の反映(第11条)」
をどう実現するか…が難しい、という問題提起があり、
子どもの意見反映の”鍵”になりうるとして「遊びと児童館」のお話がありました。
合わせて、子どもの意見の視点から「児童館ガイドライン」について、
そのポイントの説明。
=児童館ガイドライン (2018年改正)ポイント=
①ガイドラインは子どもの権利条約を基盤としている
②遊びで子どもを支えている(遊びは子どもの育ちに重要であるが後回しにされがち)
③児童館の施設特性(「主語」はすべて「子ども」)
「子どもが行きたい時に自分で選択・判断して行くことができる」
「ひとりで行っても児童館に行けば誰かがいる」
「週に一回2時間だけ、ではなくいつでも行くことができる」
「児童館には頼れるナナメのおとながいる」
④児童館の活動内容
「遊びによる子どもの育成」
「子どもの居場所の提供」
「子どもの意見を述べる場の提供」
「配慮を必要とする子どもへの対応」
また、令和5年3月、社会保障審議会児童部会放課後児童対策でとりまとめられた
「放課後児童クラブ・児童館等の課題と施策の方向性」として、
「子どもの居場所としての児童館機能・役割の強化」
「ソーシャルワークを含めた福祉的課題への対応」
「大型児童館を中心とした地域における児童館全体の機能強化」が示されました。
既に実践されている事例として、日常的な、子どもとの何気ない会話の中で、いつも夜遅くにひとりでご飯を食べていることに気が付き、それが子ども食堂スタートに繋がったという京都の児童館。
また、運営委員会メンバーに子どもが入り、企画提案、実践をしている石巻市子どもセンターらいつ等が紹介されました。
そうした現場の事例から、
「遊びを通じて子どもの声を聴く児童館
=地域における子どもの権利保障の重要な機能・役割を果たす」
「遊びを通じて子どもの声を聴く」とは、
”相談”の看板を掲げている場所には子どもはなかなか来ないけれども、
「環境や状況に関わりなく、自由に来館して遊んだりのんびり過ごすことができる常設の児童福祉施設であれば、困ったり悩んだりしていることを(いつの間にか)相談している」「子どもが困っていること、悩んでいることを言語化できない時、遊びなどを通じて気が付くことが出来る」etc
…という自然な形での相談機能も持つことになり、私自身、地域活動での経験も想起されます。
ここから先は、中野区についての私見です。
中野区では、昨年12月に「地域子ども施設の整備・事業展開の方向性」が示されましたが、
過去、児童館を小学校内のキッズプラザへ転換し、地域の児童館はすべて廃止するという方針がありました。それと比べれば「半分」は残るのだからいいだろう…という意見があります。
また「直営で残すためには9館で」という提言が現場の職員からあった、とも聞いています。
そして、「新たな機能を持つ児童館」と言われる”新たな機能”が何であるかについても、
大人が勝手に決めるのではなく、子ども達にも意見を聴く必要があり、これまでの事業評価としても真っ先に行われるべきことです。
特に、児童の権利をベースとしている児童福祉法下にある児童館の計画については、
子どもの権利条例を持つ自治体であれば子ども達の意見を無視するわけにはいかないのです。
さらに言えば、現在の児童館運営については、客観的な第3者評価もされていません。
どんな理由をもって”新たな機能”を示しているのか、エビデンスが不明確です。
全国的な傾向でもありますが、この中野区でも子ども虐待の件数は毎年増加しています。
たとえ、児童相談所が子どもや家庭に関わるに至ったとしても、
どの様な境遇であっても、日々の暮らしの中で子ども達が「困った」と言える、
言いやすい、時には駆け込み寺にもなるような、場所や環境が必要です。
そして、それは子どもの特性から考えても、「相談」の看板を掲げたものではなく、遊びを通じて楽しいと思えたり、ほっと出来て居心地が良く、また来たいと思える場こそが、そうした役割を担うことができます。
そしてまた、子どもが自分の足で行ける距離、子どもの生活圏域にそうした場所が存在しているからこそ、その役割を果たすことが出来ます。
ただでさえ小中学校の統廃合が進んだ中野区です。
不登校の状態にある子ども達も毎年増加しています。
そして、子ども達へのサポートは足りていません。たとえ学級以外の教室を校内に提供されたとしても、不登校状態にある子どもは学校の中に入ることそのものが困難です。地域にある子ども施設をもっと有効活用できないでしょうか。
無料学習塾、子ども食堂、地域の子育て支援団体…皆、活動場所を確保するのに大変苦労しています。"地域包括ケア推進"であれば、既に地域に存在し、近隣住民にも認知されている子ども施設をもっと有効に活用できないでしょうか。
キッズプラザは、授業終了後に教室から直行出来る放課後の居場所であり、
大変便利な一方、併設の放課後児童クラブが基本3年生までが利用していることもあり、いつも低学年で混み合っています。
…このような意見を述べると「区議会を敵に回すのか」と、権力を持つ方から言われることもあります。しかし、「子どもの権利条例」という素晴らしい条例を策定したのは中野区ですから、私は一人の区民として、おとなとして、条例を守りたいのです。
周知、啓発だけでは広がりません。具現化していくことこそが、本当の意味での周知、啓発に繋がります。
そして、子どもの課題が深刻化している状況があるなか、且つ、他にも老朽化・建て替えの時期を迎えている公共施設があるにも関わらず、「児童館」だけを取り出し、施設整理の対象とした「区有施設整備計画」が間違っていると考えています。
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